パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則を読んだ。
パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則 (WEB+DB PRESS plusシリーズ)
- 作者: 江渡浩一郎
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2009/07/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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印象的ながら謎深いタイトル。
この本、確か出版されたときに、誰かのブログの書評などで目にしていたので、存在は知っていました。その時の印象は「パターン、Wiki、XP」という非常に印象的にタイトルで、記憶にも残りやすいけど、内容がよく分からないなぁという感じでした。
で、実際に手に取って読まなかったのも、特に Wiki に興味ないから別にいいかという感じだったと思います。でも、実際に読んでみると、全体を通してとても興味深い話が続いており、しかも同じテーマが時代を超えて成長していく様を丁寧に解説しており、とても素晴しい内容でした。
時代と場所を超えて活躍する偉大な人物たち。
本書では、第1部で建築家アレグザンダーによって作られたパターンランゲージについてその誕生から利用、そして結果について詳しく解説してくれています。
第2部では、ソフトウェアの分野へと移り、カニンガムとベックという人物を中心に作られたデザインパターンとXP(エクストリームプログラミング)の話になります。第3部では、引き続きベックが登場し、Wikiの誕生から現在に至るまでのストーリーが続きます。
パターンランゲージという言葉については、確か芸術の分野で耳にしたことがありましたが、実際に僕が知っている芸術分野での応用は、実用性に乏しく、正直なところ価値は低いものでしたが、アレグザンダー氏の作り出したオリジナルのパターンランゲージはとても素晴しいものだと思いました。
後に、プログラミングの世界でデザインパターンの元となる、アレグザンダー氏のパターンランゲージですが、彼のその凄さは、問題を把握する能力の高さだと思いました。
通常、何かものを作る前に、懸念される問題を考えて下さいと言われても、いくつか思いつく程度です。熟練者であれば経験からある程度の問題を把握し、ちょっと優秀な責任者であればそれをノートに纏めてマニュアル化しておきます。
ですが、氏がベイエリアの高速鉄道計画を担当したときに、390個の要求条件を導き出したという話を聞いて驚愕しました。都市計画などは、もちろんその条件が非常に多岐に渡るであろうことは容易に想像がつきますが、390個も導き出すのは容易とは言えません。
まぁ、驚くべきポイントは人それぞれですが、まぁそういった膨大な要求を満すための構造として、自身の中で新たな道を切り開き、そしてその構造をサポートするための6つの原則を考え、その中でパターンランゲージを作り出したストーリーはとても興味深いものでした。