生命、情熱の造形化

19世紀の彫刻はオーギュスト・ロダンによって新しい一歩を踏み出し、近代彫刻への道を歩み始める。
彼は彫刻家カリエ=ベルーズのもとで修行したのち、イタリアを旅行し、ドナテロやミケランジェロを研究して自己の道を見出して行く。
[画像 / 青銅時代]
1877年の『青銅時代』は、ロダン独自の人間の生命、情熱の造形化をはたした最初の作品である。この彫刻は、あまりに自然主義的な肉付けのためモデルから直接型取りしたとの中傷をあびた。
[画像 / カレーの市民たち]
カレーの市民たち』は、14世紀イギリス軍包囲の際に市を救うため自らの命を敵に差し出しに向かうカレーの市民の史実に基づく公的な注文彫刻である。しかしロダンは、台座を廃しわれわれと等身大の人間のドラマ、激しい苦悶の現実的、普遍的な表現としてそれを造形化した。
[画像 / 地獄の門(正面)]
このようにロダンとともに、彫刻は、注文に支配された型に嵌めれれた表現から脱し、豊かな造形性と劇的な内面表現を獲得する。彼は一方で徹底した写実表現を行いながら、また他方、人間のもつ情念、情熱の表現をさまざまなモチーフによって追及し続けた。それは終生の大作『地獄の門』に壮大な形で総合されることになる。
[画像 / 地獄の門(下方より)]
ロダンのこうした彫刻における姿勢、観念による後世への影響ははかり知れないものであり、20世紀の彫刻をになう次世代の若い彫刻家の多くが、ロダンに憧れていた。それにより20世紀彫刻の新潮流はロダンを越えるところから始めなければならなかった。