伊藤淳伝 - 富士山編 -。


2007年の夏を前にして伊藤に転記が訪れる (上の写真は割り箸を割る伊藤)。
私の知人で当時筑波大学に通う人物から一風変わった仕事を紹介される。それが富士山の山小屋で一夏を過ごすという俗にいう山小屋バイトであった。
伊藤はこれを了とし、今年に至るまで4度の夏(六月の半ばから十月まで)を海抜3000mで過ごすという人生を送ることとなり、これによってまた様々な物語を紡ぐこととなるのだが、まずは顛末を順に追っていこう。

伊藤、富士山行きを決める。

紹介者と伊藤は同じ中学校を卒業しているのだが、例によって伊藤は影が薄かったことから、両者はほとんど面識がなかった。そのため、富士山で働くという話はまず私に振られた話であったのだが、仕事の関係もあって残念ながらお断りした。
だが、この話を面白いと思った私は、当時派遣労働をしていた伊藤へとこの話を仲介したのだった。
当然ながら伊藤も人間である。一度は『三ヶ月の間、ずっと富士山の上とかありえへんわ』と断った。しかし、伊藤の凄さの一つにすぐに考えを180度転換するという特徴がある。一晩経った伊藤は、すでに昨日の伊藤ではなく、『なんか面白くなってきたから、やっぱり行くわ』と答えるに至った。

富士山での伊藤。


一度、富士山を登ったひとであれば知っていると思うが、富士山の吉田口登山道には幾つもの山小屋が点在する。伊藤が働くこととなった山小屋は、その中でも最も歴史があり、規模も大きな山小屋の名門であった。
どこの世界の名門にも、名門にはその所以となる厳しさがある。また名門なるが故に傑物も多い。
傑物と変態は紙一重である。伊藤はこの紙一重の群れの中で四半期を過ごすことで、自らの内気な殻を打ち破ることに成功したのであった。
2007年秋、かつての影の薄い伊藤は死に絶え、元来持つ異常さのみを研ぎ澄ませた、妖刀と化した伊藤が爆誕したのである。

伊藤語録。

伊藤は昔から名言が多い。その名言を少しだけ紹介しよう。

  • 前言を撤回して「伊藤だけは信じるな。いいか、もう一度言う。伊藤だけは信じるな。」
  • オクラを食いながら「ネバネバだ〜い好き。ネバーネバーネバー」
  • 車の運転中にハンドルから両手を離して「ほ〜ら、こんなことも出来るようになったんだぜ?」
  • 助手席でビールを飲みながら、警官に対して「俺、酒飲んでるぜ?ほら?捕まえて見ろよ?」
  • 女性に対して『こいつ飲んだら凄いねんで』を聞き間違えて「え!揉んだら凄い!?」

次回、伊藤の非業なる運命が明らかに。心して待て。