花神 / 司馬遼太郎。

大分前に id:wireself さんにオススメされてから、読もうと思っていた小説で、学校にあったので借りて読んだ。
非常に面白かった。今まで読んできた司馬氏の幕末ものの中でも異色の作品だった。村田の名は他の作品などから聞いていたが、他の同時代の人物、特に志士と呼ばれる者とまったくもって違う。あとがきで、『村田は人間なのか』と書かれているが、志士をもって人間と呼ぶなら、村田はまことに人間ではないだろう。
しかし、人間は欲望を支配してこそ人間であるという考えの中では、村田ほど人間らしい者はいない。自らの基礎を築き上げたものが洋学であるのに、西洋嫌いで日本の文化を愛してやまない姿などは、どうしようもなく人間であり、魅力的である。
技術者・百姓階級から見た幕末、時代を変える材料は観念だけではなく、裏打ちされる技術、戦略が必要不可欠であるということを実践した者の話である。